大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和25年(う)3603号 判決

控訴人 被告人 金翼壽

弁護人 桑名邦雄

検察官 渡辺要関与

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

弁護人桑名邦雄の控訴趣意は同人作成名儀の控訴趣意書と題する末尾添付の書面記載の通りである。これに対し当裁判所は左の通り判断する。

弁護人の控訴趣意について、

第一点しかし、原審が取り調べた証拠中検察官提出の証拠金品総目録と題する書面並びに買上書と題する書面の記載に徴すると、その第三号乃至十二号の現に押収中の電球は合計二十個であり、その十三号の現金四百七十四円は電球二、三七〇個の換価金であるから、本件偽造電球は合計二、三九〇個である。従つて本件公訴に係る偽造電球の数が起訴状に二、三七〇個と記載されておるのに、原審がこれを二、三九〇個と認定しても起訴に係る事実との同一性を害するものとは認められない。従つてかゝる場合に於いては、仮りに訴因の変更又は追加の手続を要するのであるのに右手続をしなかつたとしても、これは単に訴訟手続上の違背になるかどうかの問題であつて所論のように審判の請求ない事件について判決したという違法はない。論旨理由ないものである。

(その他の判決理由は省略する。)

よつて刑訴法第三九六条に則り主文の通り判決する。

(裁判長判事 吉田常次郎 判事 石井文治 判事 鈴木勇)

弁護人の控訴趣意

第一点本件起訴状によれば販売の目的で所持したマツダの商標と類似の商標を使用し東京芝浦電機株式会社製の商品に類似せしめて新光電機産業株式会社が製造した電球二千三百七十個である。即ち個数は二千三百七十個である。

然るに原判決の理由の犯罪事実の摘示の項に依れば「東京芝浦電機株式会社の登録商標であるマツダの商標と類似の商標を使用し、同会社製の商品に類似せしめて右新光電機産業株式会社が製造した電球二千三百九十個を昭和二十四年五月二十六日同会社に於て販売の目的で所持していた」と判示して居る。即ち其個数が二千三百九十個である。

本件審理を調査するも何等個数に変更又は追加が無いのである。

仍て原判決は審判の請求を受けない事件について判決した違法あり、されば刑事訴訟法第三百七十八条の四に基き控訴の理由とする。

(その他の控訴趣意は省略する。)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例